こちらトルテ。ミッションコンプリート。応答せよ。
こちらミルフィ。ミッションお疲れ様です。今回のミッションは確か⋯。
MISSION
既に実写作品が存在しており、今月アニメーション作品として
公開される映画を調査せよ。
でしたよね?
ああ。そして今回その正体が分かった。これだ。
『ジョゼと虎と魚たち』!?これって確か妻夫木聡さんが主演だった、生々しいシーンもたくさんある大人の恋愛映画でしたよね!?
ああ。だが驚くことに、この作品は実写とはほぼ別物だった。アニメーションということで大衆向けのシナリオになっているし、生々しいシーンや設定もバッサリカット。そしてジョゼと恒夫の純愛ラブストーリーへと昇華していた。
なるほど、では詳しく報告をお願いします。
あらすじ
大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながら、バイトに勤しむ日々を送っていた。そんなある日、坂道を転げ落ちそうになっていた車椅子の女性ジョゼを助ける。幼少時から車椅子で生活してきたジョゼは、ほとんどを家の中で過ごしており、外の世界に強い憧れを抱いていた。恒夫はジョゼと2人で暮らす祖母チヅから彼女の相手をするバイトを持ち掛けられ、引き受けることに。口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たるが、そんなジョゼに恒夫は真っ直ぐにぶつかっていく。
映画.comより引用
簡単な調査によりますと、監督は『おおかみこどもの雨と雪』で助監督を務めた経験もあり、数々のアニメーション作品で絵コンテなどで携わっているタムラコータローさんが務め、メインとなるジョゼを『宇宙でいちばんあかるい屋根』等に出演した清原果耶さん、恒夫を『坂道のアポロン』などに出演した中川大志さんが演じる作品見たいですね。
また、今年M-1決勝戦で話題になっていた「見取り図」というお笑いコンビの方々もゲスト声優として声を当てているようです。
実写の方との違い
突然の出会いや動物園のくだり等、大筋の流れは似た部分が多い。しかし、細かい設定は現代・大衆向けの物に再構築されていた。
今回鑑賞したアニメーションバージョンは、実写版を鑑賞した人にとっては良くも悪くも驚かされるものになっていただろう。それくらい設定が違っていたのだから。
まず、時代背景が変わっている。実写ではややレトロな感じのあふれる世界観となっていたが、今回は現代に合わせた世界観にアップデート。大阪の風景は誰もがよく知る街並みになっている。
ジョゼの家こそややレトロ感はあるものの、実写の時のような貧困な印象を受ける風貌ではなくなっており小ぎれいになっていた。
最も目に留まりやすい変更点はジョゼの乗っているものだ。実写版では乳母車に乗っており、アニメ版では車椅子に乗っている。実写の方であれば、ジョゼが車椅子に乗らないことが作品のキーであり、恒夫とのラブストーリーを描くうえで重要な役割を果たしていたのだが、アニメ版ではその設定がなく、最初からジョゼは車椅子に乗っている。実写での大切な要素を今回大胆に変更していたのだ。
そんな大胆に!?それって駄目なんじゃ⋯。
確かに実写とは程遠い。だが、大筋を原作から着想を得て現代の大衆向けの作品に昇華したまた一味違った作品と捉えればよくできた作品であった。
実写では、ジョゼが恒夫と出会って外の世界を知っていく物語になっていくのだが、今回はその物語は序盤で簡潔に描かれ、その後のジョゼと恒夫の純愛ラブストーリーと2人の夢への道のりも主軸になっていた。
だからこそ多くの違いがあれど「これは新しいジョゼだな」と受け入れながら見れば違和感を感じるものではなかった。メインキャラのキャラ変更や登場人物の全体的な緩さ等、「こんなの自分の知るジョゼではない!」と思う人も多いとは思うが、確かにその意見にも一理ある。だがこれはアニメーションというジャンルを利用して大衆向けに昇華されたジョゼと考えるのならば悪くはないのではなかろうか?
アニメーションならではの美しい演出
しかし実写の濡れ場シーンは2人の大人の恋愛を魅せるのにとても印象深いシーンでしたよね?そういった生々しさがないということは、それこそラブストーリーとして深みや驚きのないシンプルな作品になってしまうのではないでしょうか?
確かにその通りだ。しかし、アニメーションだからこその魅せ方がこの作品にはあった。
実写版で強く印象に残っている濡れ場のシーン。確かに実写版でジョゼが外の世界に触れあっていくのと並行して恒夫とジョゼの距離の縮まりを大人の世界観で魅せるのにこのシーンは重要であった。しかし、今作では物語のベクトルも全く違っている為そういったシーンは存在しない。
では、アニメの方には見どころがないのかといわれるとそうではない。何といっても今作のアニメーションを担当したのがボンズというアニメーション制作会社。ここは『僕のヒーローアカデミア』や『ノラガミ』などのアニメーションも手掛けており、その作画の良さには驚かされる。そして今作でもその作画力は健在。
ヒーローアカデミアなどの時にはバトルシーンの迫力ある作画が魅力的だったが、今回はジョゼが魚と水中に沈んだような街を泳ぐ様子や海でのジョゼや恒夫の印象的な笑顔と共に描かれる水しぶきの美しさ、キャラの細かな表情など美しい作画は全体を通して魅力的であったし、水を泳ぐような描写を美しく見せることができるのはアニメーションの特権ともいえるだろう。そういったこともあって、恒夫と海を強くつなげるようなキャラ設定をしていたのは作品の良さを引き出す良い働きをしていたといえる。
主演2人が予想外にうまい
この作品、主演2人とも役者じゃないですか⋯。大丈夫なんですか?
大丈夫だ問題ない。
今回のメインを務めた2人だが、思っていたよりも声に違和感がなくて驚かされた。清原果耶に関しては今年の他の映画作品での好演を見て注目していたのだが、予告段階では中の下くらいの印象を持っていた。だが、今回鑑賞してみるとジョゼというキャラの細かな心情を声に乗せることができているし、違和感を感じるかもしれないと思っていたキャラと声の相性に関しても、彼女がジョゼのキャラを自分の声質の印象に近づけるような演技であった為違和感は後半にはほとんど感じなくなっていた。
そして中川大志に関しては予想以上。今作の好青年として描かれた恒夫のキャラとベストマッチな声質であり、演技に関しても今回の恒夫に必要なやさ男感や爽やかさがよく出ていた。
どちらも関西弁はやや拙い印象を受けるものの、キャラのイメージを壊さない演技をしっかりとできていたといえる。
実写・アニメ論争
この作品にも魅力があるのはわかりました。しかしですよ?結局どちらの方が面白いんですか?
それは一概に比較できない問題だな⋯。実写もアニメも全く違った魅力があるから⋯。
ただ、間違いなく言えるのは「実写・原作をこよなく愛する人」はあまりの改変具合に怒りを覚えるかもしれないということだな。
実写ではジョゼの「未知の世界とのふれあい」と「成長」、そして世間の認識の冷たさやそこでの生きづらさをリアルに描きつつも恒夫との大人の恋愛を描いた生々しさのある作品になっていた。だがアニメではジョゼの「未知の世界とのふれあい」と「夢」、そして恒夫とのラブストーリーという部分を中心にしたきれいなストーリーの作品へ昇華されている。ジョゼの「未知の世界とのふれあい」とラブストーリーという部分以外は全くの別物であるので一概に比較できない。それぞれに別の良さがある。
ただ、実写と原作をこよなく愛する人にとってはこの作品の改変は受け入れられないものかもしれない。そこがこの作品の問題点ともいえる。これほどガラッと変えるのであればタイトルは踏襲すべきではなかったようにも感じる。
まとめ
以上が今回の報告だな。ネタバレは極力避けたつもりだ。
かしこまりました。なんだか報告楽しそうでしたね。
ああ。いい刺激のもらえるミッションだったよ。
なるほど、ではこれからも我々に重要な作品になりそうですね。今回の調査報告はAのファイルに保存しておきますね。
ああ。異論はない。
NEXT MISSION
今年公開した作品のファイルを整理せよ。
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