(ネタバレあり)新解釈以前の問題。『新解釈・三國志』鑑賞レビュー

コメディ映画ファイル

はあ⋯。今月本当にすさまじい⋯。
年間ベストで番狂わせを起こすような作品が複数出てきて頭を悩ませることになりますし、それでもまだ番狂わせを起こすのではないかと思える作品をまだ見れていない状況(特にSNSですさまじい話題の『ミセス・ノイズィ』と『佐々木、イン、マイマイン』をまだ未鑑賞という⋯。見に行きたい感も強い。)。
そして、自分の年間ワーストを更新するかもしれないと思っていた作品も今月には2本控えていました。それが『約束のネバーランド』と今回レビューする『新解釈・三國志』。

しかし、今回レビューする『新解釈・三國志』に関してはワーストの可能性がありながらも個人的にはかなりの良作になる可能性もあると考えていた作品でした。それというのも「新解釈」ということなので、大胆な三國志を創り上げればアイデアとしては面白いので、あとは監督の技量次第だと感じていました。

今年は既に2作品の映画で監督を務めた福田監督の作品。どちらも自分自身にはあまりハマらない作品でしたが、今日俺に関しては意外と多くの人に指示された作品であるため、この作品の可能性も捨てきれませんでした。

しかし、実際今回鑑賞してみての感想ですが、かなりしんどい作品になっていました。やはり福田ワールド前回の作品となっていて、好き嫌いが分かれる作品なのは間違いないものの、今日俺と違って面白いと感じる部分も少なかったですし、コメディ以外の見どころがなかったりメリハリが全体的に見えなかったです。

福田作品のオールスター勢ぞろいという感じの謳い文句で派手に宣伝していた割には、やっていることは今までと全く変わっていませんし笑いの引き出しもワンパターン。今回は自分のあまり知らない三國志だったので大丈夫でしたが、仮に自分の好きな作品をこんな感じの『新解釈』として作品化されたなら怒るかなと感じるレベル。

ただ自分にとっては全く合わない作品ではあったものの、この作品は福田監督の作品では珍しく小さなメッセージ性があったりしたところとかは後に述べてはいくんですが良かった点だと思うんですね。だから作品自体は苦手でもこの作品の言いたいことにはうなずける感じです。
以下ではこの作品について詳しく述べていきます。

福田作品らしさを失わない作品。

やはりこの作品についてはこれにつきます。福田監督は役者陣を好きなようにふざけさせたり、アドリブも面白ければ積極的に取り入れていくいわゆる福田ワールドという独特の世界観を持っているのですが、この作品でもそんな福田ワールドが全開の作品となっていました。

福田ワールドが展開されている作品はもう本当に自由!佐藤二朗は今回はそこまで出番は多くなかったものの、ムロツヨシや大泉洋などの役者陣も演じているという感じがほとんどなく、自由気ままにバカやってふざけて、だからこそ生み出せる笑いは福田監督あってこそであるといっていいでしょう。

いつも通りの福田ワールド全開の笑いを三國志という物語に落とし込んだこと、そして唯一性のある笑いを三國志で生み出すという大胆な発想は見事であったと思います。どんな世界観も自分のフィールドに持ってくる福田監督の芸当は評価するべきものなのかもしれません。

豪華な役者陣とシークレットキャスト。

そしてこの作品、また謳い文句にとんでもないことを書いていたようで「オールスターズが全員集合(アッセンブル)!」という某ヒーロー映画作品を連想させるようなフレーズが使われているという。このフレーズの件に関しては『ヲタクに恋は難しい』の時に使われた「ヲタクたちのラ・ラ・ランド」というフレーズと同じくらいに嫌悪感を感じましたが、その話は置いておいて、今回のキャストは福田監督作品の中でも比較的豪華に仕上げてきたものとなっていました。

『銀魂』『今日から俺は!』『勇者ヨシヒコ』の出演者をふんだんに使いつつ、今回の主役である大泉洋やシークレットキャストを含む福田作品初出演ながら、なかなかの大物のキャスティングも。そして、何作も福田監督の作品に出演している、いわゆる「福田組」はやはり福田監督の求める笑いに忠実な演技となっており、今回からの新規キャストの方々も他のキャストに負けないくらいのパワーで福田ワールドを盛り上げていました。

そういった意味では、超大作と謳うにふさわしいキャスティングはしっかりとなされていたように思えます。

良くも悪くもぶれない福田ワールド。

そして今回はやはり楽しめなかった身として気になった点のほうが多かったです。まず、そもそも福田ワールドの笑いは初めて見る分には楽しめるものではあるものの、その多くがワンパターン。

役者頼みの笑いとギャグのくどさとその長さが最初こそ楽しめるものの、何度も見ているとすぐに飽きてしまいます。また、福田監督の代表作ともいえる『勇者ヨシヒコ』に関しては多少ギャグをくどくしてもドラマの短い尺であればストーリーの進行に支障が出ない作品であったため見やすかったのかなと⋯。


しかし、映画という長い尺で福田監督の乗りノリを詰め込むと、気になっていなかったギャグのくどさが何度も連続し、それはそれは見づらくなってしまうしストレスも感じてしまう。そういった意味で映画と福田監督の相性はいいとは言えないと個人的に感じます。そして今作ではそういった福田ワールドが今まで以上に強い。なので福田ワールド大好きな人はとことん好きな作品になると思いますし、苦手な人は今まで以上に苦手になるかもしれないです。

三國志が好きな人は怒るかも。

ただ、今回の物語は三國志。ふざけるところはふざけて真剣な部分は真剣にやる。このようなメリハリさえついていれば作品としてかなり面白いものになったと思います。特に桃園の誓いとか孔明を勧誘するところとか。

しかし残念ながらこれらも全てギャグにされる。関羽・張飛・劉備の結束の強さを示す誓いも台無しにされ、劉備の奥さんの死に関してもひどい描き方をされ、孔明も人物像の大幅改変で勧誘も薄っぺらいどころかむしろいらだちを感じるものとなっています。三國志ファンの方の中にはおそらくこんなひどい設定にされたら怒りを覚える方も出てくるのではないのでしょうか?たぶん自分もこれが自分の好きな作品だったら怒ってます。

「そんなムキにならなくても」と思う人もいるかもしれないですが、みんな大好き『鬼滅の刃』の炭次郎が、禰豆子を人間に戻したいという理由が実は「鬼になった妹を守ろうと頑張る自分、カッコいー」とか思っている隠れナルシストだったからだとかいう設定にされてたらどうですか?怒る人もいるでしょう。それに、改変されてもムキにならないファンが多いのであれば『STAND BY ME ドラえもん2』に関してもあれだけ烈火のごとく燃えないと思うのですが⋯。

キャラ崩壊、原作からあまりに離れた設定などを「別作品だから」といって肯定し、怒る人々を非難するのはお門違いかと感じます。愛が深いからこそ、好きな作品をもてあそばれるのに耐えられないんです。

作品の解釈は十人十色。

ただ、この作品に福田監督がのせてきたメッセージ性は良かったとは思いますね。絶望的にコメディ作品としては楽しめなかったものの、「作品の解釈は人それぞれ。違った解釈がアイデアにつながる」といった感じをこの作品では伝えようとしていたように感じました。しかし、そのメッセージはラストでさらっと流されるだけですし、2時間近く楽しめないギャグをみせられたあとだとその伝わり方も半減。

新解釈とはいえ、メリハリをつけた原作愛を少なからず伝えることができるコメディ作品であればこのメッセージにも説得力を持たせられたのではないでしょうか?

まとめ

そういった点を総合的にみて今回のこの作品の自分の満足度は
100%中・・・26%
でした!

福田監督の作品は新たな引き出しを作って映画を構成するか、もしくはテレビの方に集中するかした方がいいように感じます。今のままではすぐに飽きられてしまう可能性が高いですし、『勇者ヨシヒコ』や『今日から俺は!』の成功もあったのでスキルがないわけではないゆえにその道にフォーカスを当てて進む方がいいのではないかと思います。

ただ、あまりの内容の改変っぷりに個人的には三國志に興味を持てたので、そういった意味ではある意味成功だったのかもしれません。福田ワールドがどんな作品でも好きという人にはオススメですが、少しでも合わないと思っている方や、好きな作品嫌いな作品が混在しているという方には素直にオススメできないと思います。
ではでは(^^)/

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