(ネタバレあり)今年一番の問題児『バービー』調査。

コメディ映画ファイル

※改めまして映画調査ファイルの区分はこちら。

トルテ
トルテ

ミルフィ、突然なんだが⋯潜入捜査に協力してくれないか?

ミルフィ
ミルフィ

潜入捜査?私がですか?

トルテ
トルテ

ああ。どうやら今回の調査場所が特殊なようでな。服も準備されているから着替えていくといい。

ミルフィ
ミルフィ

な、何だか思っていた服じゃないですね⋯。ピンク⋯目立ちそう⋯。

トルテ
トルテ

じゃ、あとは頼んだ。

ミルフィ
ミルフィ

ちょ、えええ!?

『バービー』

ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。

バービー : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)より引用

あらすじはこんなところでしょうか。

様々な人種や個性あふれるバービーたちとボーイフレンドのケン達たちが完璧な日常を送るバービーランド。ある朝、死について考えてしまったブロンドヘアのバービーの身体にセルライトが生まれたりかかとが地面に下りたりというような異変が起こってしまう。

その異変を解決するために、現実世界とバービーランドの間に生じた裂け目を修復する手立てを探してくることを決めたバービーが、ついてきてしまった金髪のケンと共に現実世界の彼女たちの持ち主を探して原因を突き止めようとするというような話ですね。

調査の手ごたえ

ミルフィ
ミルフィ

良い部分もありますが、残念な部分も多い。
ミームの話を抜きにしても、絶賛するほどの内容ではないですね。

不謹慎なネットミーム『バーベンハイマー』を取り入れたツイートに対し、公式が「忘れられない夏になりそうね。」などと茶化したツイートをしてしまい炎上した本作。

公式からの本件に関する謝罪はあったので本調査でもフラットに作品の報告をしようと思いますが、ミームの件を抜きにしても特別面白いと感じる作品ではなかったですね。

冒頭からバービー人形の魅力を実写でふんだんに落としこみ、パステルカラーに包まれた可愛らしさのあるバービーランドの雰囲気は良かったです。そこで行われる華やかなガールズナイトも目を見張る素晴らしさでした。

この作品の持つ女性のエンパワーメントを強く押し出す作風も、本家バービー人形が発信していたメッセージを強く反映したものであるのにも違いありません。

けどそこまでにあったドール人形すべてを否定しバービー人形を神格化する破壊描写やあざといコメディと、露骨なメッセージ性の主張に終盤は随分辟易としてしまいました。

調査ポイント

  • バービー人形の歴史全開
  • 完璧なバービーランド
  • ジェンダー平等が叫ばれるっ世界にメスを入れる作風

というわけで1つずつ見ていきます。

バービー人形の歴史全開

ミルフィ
ミルフィ

Hey,ケン!潜入捜査終わりましたァー!

トルテ
トルテ

誰がケンだ。それにどうした?やけにハイテンションだが⋯。

ミルフィ
ミルフィ

Sorry.バービーランドでの口調が抜けズ⋯。

時代を先回りして、人種や性別を超えて「You Can Be Anything(なりたい自分になれる)」という信念のもとオシャレで可愛いを発信してきたバービー人形。

そんなバービーの歴史を詰め込んだこの世界観は近年よく叫ばれているポリコレという面を自然に取り入れることに成功しています。どんな人種・種族が出てきても、それがバービーの歴史なのだから必要不可欠だと言い切れるのはズルい!

しかも、この作品ではバービー人形のこれまでの小ネタが詰め込まれていたのも見どころ。冒頭『2001年、宇宙の旅』のオマージュで、巨大なバービー人形(マーゴット・ロビー)の登場がそれまでのドール市場を変えたという演出が施されているんですが、その際彼女が纏っていた初代バービーの衣装に身を包んでいたのは印象的でした。

その他、廃版ドールや激レアアイテムの登場も良い。ケンによって激レア衣装がなんのありがたみもなく投げられる無慈悲な様子や、廃版になった妊婦のミッジや後ろにビデオが付いたビデオガールバービーなどが世界観に溶け込んでいる様子はファンの心をくすぐる面白い演出です。

完璧なバービーランド

ミルフィ
ミルフィ

それにしてもバービーランドの造形はブラボーでした!Amazing!

トルテ
トルテ

か、絡みづらいしこのノリについていけん⋯。

ミルフィ
ミルフィ

Oh,sorry.少しずつ戻せるといいんデスが⋯。

現実世界とバービーランドの世界をハイブリッドで描いていく本作。中でも圧倒的にバービーランドの描写が光っています。

パステルカラーに包まれ、可愛さを放つ世界に混在する無機質さは見事。
バービーランドにはトースターや歯ブラシなど生活感溢れるアイテムがあっても、そのおかげでドールの世界に入り込んだような没入感を演出できていました。

もう1つ忘れてはいけないのはバービーランドの住人たち!主演のマーゴット・ロビーは特に冒頭から圧巻の存在感。バービーハウスでの完璧な1日を迎える寝起きから出かけるまでのルーティンを描いたシーンでは、彼女の再現性の高い演技が光っています。

細かな表情はどこを切り取っても人間らしさを感じない無機質な感じを醸し出しており、それが現実世界との交流の中で徐々に人間らしく見えるようになる後半の演出で活きてくる。これはまさに彼女の演技あってこそ。

ただこの弊害として、現実世界の描写で極端にIQの下がったマテル社社員たちの登場でコメディ全体にわざとらしさが充満し、退屈になってしまったのは勿体ない印象でした。

ジェンダーの観点から不完全な世界をあぶり出す。

ミルフィ
ミルフィ

今回の調査で考えたんですが、私もこういう調査をもっとしたいデス!MIAにもジェンダー平等を!

トルテ
トルテ

ジェンダー平等⋯。確かにMIAは前時代的な価値観を捨てきれていない気はするな⋯。

今作は単なるドール人形の実写映画化ではなく、You Can Be Anythingの精神のもと大切にしてきた価値観を強く主張する作品です。

バービーランドの女性優位の社会と現実世界の男性優位の社会、それぞれの社会を異なる文化で育った第三者が俯瞰することができるような構成になっています。

現実世界からバービーランドへ来たグロリアはドールの世界まで男性優位の社会になるなんて息が詰まりそうという事を吐露し、対するケンはバービーランドでの自分たち男の形見の狭さに不満を持っている。

フェミニズムであったバービーランドをマチズムに染めようとするケン。この確執をケンの意思をただ否定するのではなく、彼も「ケン」としてこの世界に必要な住人であるということを自認させて平和的にまとめ上げる優しい落としどころは素敵でした。

少々男性優位の社会構造が過剰に描かれていたようにも見受けられますが、ジェンダー平等が叫ばれているこの世の中。女性の社会進出が進んできたように思えても第三者目線で見つめなおすと不完全であり、それでもその現状を悲観するのでなく受容しながら道を切り開くことの重要性を作品から感じました。

MIA的映画調査提案

  • 『キューティ・ブロンド』
    失恋したファッション専攻の優等生でブロンドヘアのエルが、元カレにもう一度振り向いてもらうためにハーバード大学の法学部に入り奮闘する話です。

    今まで学んできたこととは正反対な分野で奮闘する彼女の姿には勇気をもらうことができ、バービーのような明るさともろさ、周りを巻き込む力もある。

    女性のエンパワーメントを描いた作品の代表といえる作品でもあるので『バービー』同様、楽しくも元気をもらえるコメディ作品です。
  • 『魔女見習いをさがして』
    『おジャ魔女どれみ』20周年を記念して作成されたアニバーサリームービーで、『おジャ魔女どれみ』を観て育った女性3人がどれみゆかりの地で出会い、どれみの聖地巡礼の旅に出るという話です。

    日本社会の女性の立場の弱さが克明に描かれており、そんな女性たちが聖地巡礼の旅を通じて自分達らしく生きる様子はコミカルで元気ももらえる。

    『おジャ魔女どれみ』に触れたことがなくとも、何かコンテンツに没頭し救われたことがある人なら誰でも楽しめる作品です。『バービー』同様のファン心擽る小ネタも魅力!
  • 『ヘアスプレー』
    人気番組のオーディションに出ることを夢見るトレイシーが、番組のオーディションに出て、そこから成功を掴んでいくサクセスストーリーのコメディです。

    底抜けの明るさ、楽しいミュージカル、内包しているテーマの重みと雰囲気は『バービー』と似ている印象を受けるものの、テーマ自体は全く違うので違った気付きを得ることができます。

    美醜や人種差別によって迫害を受けるトレイシーが、華やかでポップさ全開のミュージカルに乗せてそんな現状を歌い飛ばす姿には元気をもらえること間違いなし!また彼女の母親を、特殊メイクを施したジョン・トラヴォルタが演じているのも注目です。

最後に

ミルフィ
ミルフィ

ふう、ようやく口調も戻ってきました。ハイテンションな姿を見られたのもお恥ずかしい⋯。

トルテ
トルテ

まあ別に悪くないとは思うが。あとミルフィの調査への参加については上層部に掛け合っておく。

ミルフィ
ミルフィ

いいんですか!?それならまた潜入捜査などお任せくだされば!

トルテ
トルテ

今後は俺もファイルの整理を覚えんとな⋯。今日の記録も大変だ。

調査結果:ファイルBに保存

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