電子世界への原点回帰!「竜とそばかすの姫」鑑賞レビュー。

SF映画ファイル

トルテ

秘密結社M・I・A所属の男。
自称スパイらしいが真偽は不明。
ハイテクデジタルデバイスに目がない。

ミルフィ

秘密結社M・I・A所属の女。
トルテの右腕となる存在。
ネットゲームは専門外。

改めて映画調査ファイル区分がこちら

映画調査ファイル区分

S⋯今年最も印象に残った調査

A⋯かなり印象に残った調査

B⋯いってよかったと思えた調査

C⋯可もなく不可もなくな調査

D⋯あまり良くなかった調査

E⋯苦戦を強いられた調査

初めに

これだけ長い期間もブログを止めてしまい本当に申し訳ない。

これだけ空いてしまった理由といたしましては、まず普通にTwitterで感想を上げるレベルで満足になっていってしまったという部分や、一度離れてしまうとなかなかもう一度開いて更新しようと思えなかったんですねこれが(;’∀’)

現在は転職先での業務にも慣れてきて、久しぶりに投稿したくなった限りです。ただ、このブログに関してはあまり知識のない映画好きの端くれの、あまりためにならない映画レビューであるためにその辺はご理解の上楽しんでいただければなと。
そして、Twitterではいろいろな映画を鑑賞したレビューも挙げておりますし、こちらはさっくりと読める内容で書いていることが多いです。なのでTwitterのフォローもよろしくお願いいたします!

夏+電子世界といえば⋯

トルテ
トルテ

ようやく潜入捜査も落ち着いたが⋯、まさかまたあの作品に近しいものを調査することになるとは⋯。

MISSION

仮想空間「U」の世界を調査せよ

ミルフィ
ミルフィ

やれやれ、久しぶりの報告ですね?

ところで今回の調査対象、なかなかの大物という事を聞いていますが?

トルテ
トルテ

そうだな。それがこの作品だ。

ミルフィ
ミルフィ

「細田守監督 最新作」?あ⋯!もしかしてあの『時をかける少女』の監督さんの最新作ですか!?

トルテ
トルテ

そう。アニメーション映画の中でもヒット作を生み出すことの多いあの監督の最新作だ。

あらすじ

高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。

映画ドットコムより引用

細田守監督とは?

ミルフィ
ミルフィ

細田守監督といえば『サマーウォーズ』が特に印象深いですね。OZのあのデジタルな世界観の楽しさとひと夏の青春がぎっしりと詰まっていて最高な作品でしたね!

そして『時をかける少女』も外せませんね。タイムリープと青春の描写に加えてタイムリープの際に現れる奇妙なシステムが印象的でした!私はどちらも大好きです。

トルテ
トルテ

ああ。その2作品は細田守監督の代表作ともいえる2作品だな。この2作品に関しては昨年や今年に4DXバージョンの公開があるぐらいに人気の高い作品になっている。

この2作品は青春ものの作品でありながらも、仮想空間やタイムリープをする装置も鍵を担う役割を持っておりそういった意味ではSF映画としての性質も持っている。そして細田監督の作り出す仮想空間には圧倒される魅力が詰まっており、アニメーションとしてのクオリティが詰まっているだけでなく、同じように田舎の風景や日常の懐かしさあふれるような空間も生み出すため、1つの作品で大きく違う2つの世界を描くという楽しさがあった。

近年の細田監督の作品について。
トルテ
トルテ

これは一個人の意見ではあるが、どうも近年の細田監督の作品は家族をテーマにすることが多くなり、サマーウォーズのようなエンタメ性抜群の楽しさあふれる世界観が見れなくなってしまっているのは残念な部分だな⋯。

これについてはずっと思っていたことではあった。『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』は賛否は分かれているものの、個人的には『バケモノの子』のような異界の魔物との師弟関係のような親子の物語は嫌いではなかったしむしろ好きであった。だが、一番悪い意味で話題となってしまったのは『未来のミライ』だろう。

この作品は細田監督作品の独特な世界観も薄く、子供が極端にわがままに描写されており本来の伝えたいメッセージが伝わりにくくなってしまっている。また、この作品の中でタイトルにもなっている未来のミライちゃんの役割も非常に薄くなってしまっており、迷走している感じが否めなくなってしまっているように感じてしまう部分もあった。そんな現在やや不調のようにも思える監督の最新作についての調査報告をこれから行っていく。

原点回帰の世界観

ミルフィ
ミルフィ

確かに私も『未来のミライ』についてはあまり好みにハマれませんでした。今回の作品も楽しみ半分不安半分です。

トルテ
トルテ

確かにそう思うのもわかるが、今回舞台となるのは高知県の田舎の高校、そして仮想空間「U」だ。この仮想空間「U」は『サマーウォーズ』の「OZ」に近しいデジタルの世界となっている。

そう。今までは家族についての描写を大切にするあまりにおろそかになっていた、「仮想空間」が物語の舞台となっている。そして今回は主人公の「すず」という人前で歌えない女子高生が、「U」の世界で「Belle」というアバターで歌姫として君臨することとなり、ある日出会った謎の「竜」が何者なのかをさがす話となっている。『サマーウォーズ』が「仮想空間を守り抜く話」であるならば今作は「仮想空間を通して謎の人物を見つけ出す話」となっており、毛色は全く違っている。

だが、大人気の『サマーウォーズ』のような世界観をもう一度やるということで自分自身も今までの細田監督作品よりも期待値は高くなっていたな。そしてそんな原点回帰ともいえる内容が予想された今作は、今まで以上に期待していた人は多かったのではないだろうか?

圧巻の映像表現と歌の迫力

ミルフィ
ミルフィ

なるほど、原点回帰の作品という事を聞くと今回ばかりは期待せざるをえませんね!

実際に調査してみてどうだったんでしょうか?

トルテ
トルテ

そうだな。まずはその映像表現と歌の迫力については、今年のアニメーション作品の中でもかなり上位に食い込む仕上がりとなっていた。そしてそれらだけを見れば『サマーウォーズ』にも引けを取らないレベルだな。

今回、Uの歌姫「Belle」こと女子高生の「すず」は、シンガーソングライターである中村佳穂さんが務めている。そのおかげもあって「Belle」の歌のパートの音楽は非常に心地よいメロディとなっており、どれも思わずスクリーンに引き込まれそうな迫力を秘めていた。そしてその歌をさらに盛り上げるUの世界の迫力満点の映像。これはさすがに今までの細田監督の作品と違った色がしっかり出ているといえるだろう。

最初の「歌よ」のような優しさの中に力のこもったような曲や「はなればなれの君へ」のようなしっとりとした想いを歌ったような曲はその美麗な映像も相まってグッとくるのだが、自分は冒頭の「U」の音楽が特に印象に残っている。Millenium ParadeとBelleのコラボ楽曲である「U」だな。この曲がUの世界観とどんな物語が今からはじまるのかというワクワク感を一気に盛り上げ、開始数分で一気に「その世界観の魅力に飛び込みたい!」と思わされることになったな。まさに、導入としては完璧な楽曲だったのではないだろうか?

キャラを活かしきれていない感覚。

ミルフィ
ミルフィ

聞いている限り、今回の細田監督の作品はかなり面白そうな感じじゃないですか?

私は今までの作品よりも「見てみたい!」って思えるのですが。

トルテ
トルテ

ああ。だが、今回の作品についても細田監督が「伝えたいこと」や「やりたいこと」を詰め込みすぎて、少し暴走気味に感じる部分が多かった。多くのやりたいことを詰め込んだ結果、そのやりたいことに脚本が追いつけていない感覚が強い。

その一因がキャラだろう。この作品にはBelleや竜を含め、多くの登場キャラが出てくるのだがそのどれもが「展開のために用意されたキャラ」というニュアンスが強く感じてしまうようになっていた。特に後半、Belleという名前と竜の禍々しい見た目のアバターを活かしてあのディズニー映画『美女と野獣』に近しいことが行われるのだが、それがさりげなくではなく一致率80%あるのではないかと思えるほど大胆に行われていた。オマージュとしてシーンを盛り上げるため、2人の距離を縮めるためというよりも、ただただ「仮想空間版・美女と野獣をやりたかったから」という監督の我を満たすために作られたように思えるほどであった。

そしてUの世界に出てくるアバターや現実世界の同級生やおばちゃんたちも展開のために用意された印象が強く、そのせいでキャラはBelle や竜、しのぶ以外はあまり印象に残らなくなってしまっている。キャラとしての深みがなく「物語でこれをした人」というような記憶だけしか残らないのは悲しい部分ではあるのではないだろうか?

そもそもUの世界自体もあまりにも説明不足となっており、「サマーウォーズのような作品をもう一度やるためだけに用意された空間」という印象を受けてしまった。作品全体の「用意された感覚」が色濃く出てしまっているのがマイナスな印象を受けてしまった部分だな。

詰め込まれすぎて消化不良なメッセージ

ミルフィ
ミルフィ

なるほど、用意された感じが前面に出てしまっているいびつさが作品全体の没入感を妨げている節があったんですね⋯。

トルテ
トルテ

キャラが弱いだけならまだしも、詰め込みすぎのせいで脚本のあらゆるメッセージが消化不良を起こしてしまっている。急転直下すぎる展開が多く、伏線を回収しているというより「伏線を強引に片づけている」という感じを作品全体から感じてしまうこととなってしまった。

この作品では細田監督が様々なドラマを詰め込むことに必死になりすぎてしまっていることによってかなりの部分に消化不良が生じてしまっている。家族の物語、青春、友情、恋愛、社会問題、ネットの危険性等多くの物語があるのだが、そのどれもがやや消化不良となってしまっている。

恋愛要素や社会問題については主軸が置かれていたからかまだ違和感は少ない方だったのだが、家族、青春、友情、ネットの危険性などについては取ってつけたような感じが強く、全体的な物語を歪なものに仕上げてしまっていた。特に家族の物語については、何度か物語に関わる部分として描かれてはいるものの、ウェイトがそこに乗せられていない事は一目瞭然であり、どこか「とってつけた感のある違和感を発する要素」となってしまっていた。主人公の「すず」に関係する重要な物語の1つでもあるのだがどうにもしっくりこない感覚がある。

そして、様々な物議をかもしているのが終盤の展開。正直自分自身も手放しで「素晴らしい!」とは言い切れないもやもやが残る。終盤の展開は正直苦手な人も多いのもうなずける内容だ。

まとめ

トルテ
トルテ

以上が今回の調査報告だ。素晴らしいところはとことん素晴らしく、だからこそもっと欲張りたくなってしまうような、かなり惜しい作品のように感じたな⋯。

ミルフィ
ミルフィ

なるほど。今年の上半期に関しましては非常にレベルの高い作品が集結してしまいましたし、より高いレベルを求めてしまう気持ちはよくわかります。

脚本のクセの強さもありますが、アニメーション作品としての圧巻の映像と音楽は間違いなく一見の価値はありそうですし、BかCのファイルに保存しておきましょう。

トルテ
トルテ

そうだな。確かにクセはあるが間違いなく映画館でみるのがオススメの一作だ。

そういえば去年の上位ファイルと今年の上半期のファイルの整理についてなんだが⋯。

ミルフィ
ミルフィ

本当に遅かったです⋯。一体今何月だと思ってるんですか?

次のミッションまで時間もありませんので、手早くまとめますよ⋯?

コメント

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