実質2分の世界の物語『リバー、流れないでよ』調査。

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ミルフィ
ミルフィ

あ~、資料整理が終わんない⋯。

時間が無限にあればなあ⋯。

トルテ
トルテ

時間が無限に欲しいのか?

なら京都の貴船に行くといい。今なら無限の時間を得られるぞ。

ミルフィ
ミルフィ

無限の時間!?そんなおいしい話が!?

トルテ
トルテ

そのかわり、資料の整理も進まんだろうがな。

ミルフィ
ミルフィ

そ、それってどういうことで⋯?

トルテ
トルテ

というわけで、調査報告だ。

『リバー、流れないでよ』

京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」で仲居として働くミコトは、別館裏の貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将に呼ばれ、仕事へと戻る。だが2分後、なぜか先ほどと同じ場所に立っていた。そしてミコトだけでなく、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちもみな、同じ時間がループしていることに気づく。

リバー、流れないでよ : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

あらすじはざっとこんなところ。
劇団として有名な「ヨーロッパ企画」による長編映画第2弾だ。

ちなみに、長編第1弾作品である『ドロステの果てで僕ら』は我々の調査ファイルではA+に分類されており、U-NEXTで見放題配信もされているので強くオススメする。

ここがすごい!

  • 2分間のタイムループという絶望感
  • 無尽蔵の時間に1分の重みを知る
  • 飽きない!

というわけで1つずつ見ていこう

2分間のタイムループという絶望感

ミルフィ
ミルフィ

2分でタイムループなんて⋯。そんなの整理をしても戻されるなら意味ないじゃないですか。

トルテ
トルテ

そう。それが本作の肝だ。

1日がループする作品は『恋はデ・ジャヴ』、1週間がループする作品には『MONDAYS』などがあるが、今回のループは2分。

見ての通り短い。とても短い。これだとカップラーメンも作れないし、外出も満足にできない。それが「旅館で」「お客様を巻き込んで」起こってしまう。地獄だ⋯。
そんな地獄を乗り切ろうとする旅館の仲居さん達の振り回されっぷりやお客さんのパニックっぷりは実に面白い。

無尽蔵の時間に1分の重み

トルテ
トルテ

そして哀しきかな、ループしたとしても記憶はしっかり引き継がれるという仕組みだ。

ミルフィ
ミルフィ

え?という事は、情報を集める時間は無尽蔵にあるじゃないですか!悪くないかも!

トルテ
トルテ

確かに考えたり知識をつけたりする時間は無尽蔵に手に入るが、何かを実行しようとするとその時間は2分しかないんだぞ?

時間はループするものの、記憶は引き継がれるために学び考える時間は確かに無限。
だが未来が動き出さない限り、前進もできないからそれだけの時間があっても持て余すだけだ。

だからこそ時間を動かして未来をつかみ取る必要があるのだが、そのために動けるのはたった2分。やはり短い。
だが、記憶を全員が引き継ぐこのシステムを作中でうまく利用されており、「このターンだともう何もできません!次はもっと段取りよくやりましょう!」と反省し、続くループに活かす様子が見れる。

考える時間は無限にあれど、使える時間は短い。だが、2分までの間にもできることは間違いなくある。
そう、この作品では「1分の重み」という言葉の説得力がすさまじいんだ。

飽きない!

ミルフィ
ミルフィ

⋯いや、何言ってるんですか?映画として「飽きない」なんて大前提なのでは?

トルテ
トルテ

それは間違いないんだが、タイムループものは飽きることも多い。あくまで個人の見解だが。

タイムループ作品には一定のリズムが決まっており、同じやり取りを何度も見る必要のある作品も多い。なので、面白い面白くない関係なく一部のやり取りに飽きが来てしまうことはよくある。


だが、今作はループはすれど記憶は引き継がれるため、ループごとにほとんどのやり取りが刷新される。
そして刷新されるやり取りで進展も出てくるので飽きずに観ることができる。

さらに徹頭徹尾ドタバタでふざけているわけではなく、未来に進む恐怖と進むことの大切さというテーマも内包している。

今作には辛いことからの逃避や楽しいことの終わりを迎えたくない故に「このまま時間が止まればいいのに」という願いを主人公のミコトをはじめ、様々な人が持っている。
そんな中、ミコトの彼氏が望む未来のために自分がどうしたいかを葛藤する彼女の物語も魅力的でメリハリのついたバランスのいい脚本といえよう。

最後に

トルテ
トルテ

以上が今回の調査の報告だ。

恋愛パートのテンポが若干悪くなる部分や、2分ループの謎の後付け感もあるが「未来は明るいよ」という優しさ溢れるアプローチをするラストですべて持っていかれたな。

ミルフィ
ミルフィ

確かに。緻密に計算された上田誠さんの脚本もさすがドロステで短時間の未来視をコミカルで丁寧に脚本に落とし込んだ方だといえますね。
あと送っていただいた調査写真の旅館も風情があっていってみたくなりますね。

トルテ
トルテ

それは実際にロケが行われた貴船の実在する『ふじや』という旅館だそうだ。
京都の貴船町にて営業中のようだから羽を伸ばすのに行ってみてもいいんじゃないか?

ミルフィ
ミルフィ

羽を伸ばす時間があれば⋯の話ですけどね⋯。
やっぱり時間が欲しい~!!!

余談

この記事を投稿する6/29現在では、この作品は全国で20館の上映しかなかった。
しかし、6/27に『リバー、流れないでよ』の公式Twitterより、世間での好評もあり7/21より順次、全国18館の映画館での拡大公開が決定した。


「今観に行ける範囲の映画館での上映がない!」という人も諦めるのはまだ早い。この拡大公開のチャンスをぜひ活かしてほしい。

調査結果:ファイルA+に保存

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