※改めまして映画調査ファイルの区分はこちら。
ああー!リ〇ードンーー!!
堂々とポ〇モンをするな。
いいじゃないですか、夏休みですし。それよりギャラド〇っていうポ〇モン、強くてムカつきます。
水タイプと炎タイプは相性が悪いからな。だが、映画だと相性最高な作品もある。
いーや!私は水タイプとは分かり合えません!
お前がそうだとしてもまずは俺の調査報告を聞け⋯。
『マイ・エレメント』
火、水、土、風のエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。家族のために火の街から出ることなく父の店を継ぐ夢に向かって頑張っていた火の女の子エンバーは、ある日偶然、自分とは正反対で自由な心を持つ水の青年ウェイドと出会う。ウェイドと過ごすなかで初めて世界の広さに触れたエンバーは、自分の新たな可能性、本当にやりたいことについて考え始める。火の世界の外に憧れを抱きはじめたエンバーだったが、エレメント・シティには「違うエレメントとは関わらない」というルールがあった。
マイ・エレメント : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)より引用
あらすじはざっとこんなところ。
小さいころから父親の雑貨店で手伝いをしてきた「火」のエレメント・エンバーがある日、不慮の事故で家に流れ着いた「水」のエレメント・ウェイドに出会う。
ウェイドはエレメントシティの検査官として働いており、この日も謎の水漏れ騒動に関する調査をしていたのだが、エンバーの父親の店が認可の降りていない違法な店舗であるということがバレてしまい、違反切符を切られて営業停止寸前まで追い込まれてしまう。
後に事情を知ったウェイドが、エンバーと共に営業停止を阻止するために検査局のお偉いさんである、「風」のエレメント・ゲイルに直談判し、「エレメントシティの水道の異変の調査と解決」ができれば営業停止処分を撤回するという取引のもと、協力して問題を解決していこうとする中で2人の距離が縮まっていくようなストーリーだ。
調査の手ごたえ
思ったよりは楽しめた。
大切な人と一緒に観たい映画だな。
ピーター・ソーン監督作品である『アーロと少年』の絆を過信した作品性が受け付けなかったので、今作も楽しめるか不安だったが、そんな不安とは裏腹に今作はとても楽しめた。
元素といいう概念を擬人化した世界はピクサーのアニメーション力もあり、魅力に溢れている。
しかも、火の性質を利用して気球を飛ばしたり、水を凸レンズ代わりに光を集めて着火したりと日常の水や火の役割を自然に詰め込んだ演出は親近感がありアイデア力抜群だ。
だが、終盤押し寄せるピンチがご都合的に終わってしまう部分や予定調和で味気ないハッピーエンド、火と水以外のエレメントが世界観を作るためだけのオブジェクトと化している様子はもったいない。
まあそれを踏まえても、魂の世界や死者の世界を映像化してきたピクサーの強みが遺憾なく発揮された1本だ。
そして、この作品が描くエンバーとウェイドの元素を超えた濃密な恋愛劇は、デートにもってこいの質感故に、気になるあの子を誘って見に行く映画の第一候補として申し分ない。
調査ポイント
- ピクサー印の映像美
- ウェイドがもたらす恋の炎
- 移民の物語と老いがもたらす子孫への圧力
というわけで1つずつ見ていこう
ピクサー印の映像美と魅力的キャラの描き方
はあ、ここまでボコられると心も荒みますよ⋯。どこかで心を浄化したい⋯。
それならこの作品が最適だな。ピクサーが仕掛けるエレメント世界の映像美で心を癒せ。
ディズニー・ピクサー作品にとって自明視されている美麗な3Dアニメーションは今作でも健在だ。いや、寧ろ他の作品よりも今作のアニメーションは美しい。
まず、雄大で様々なエレメントが混在するエレメントシティの迫力は圧巻であり、特に線路を走るたびに急流すべりの如く水をまき上げる電車は印象に残る。
もう1つ印象的だったのはエンバーの配達シーンだ。彼女は「雑貨店での父親の最速配達記録を破って一人前として認めてもらうんだ!」と意気込みながら火のエレメント達に商品の配達をする。
ノンストップで配達をこなすトム・クルーズさながらのバイクアクションはアニメーションと侮るなかれの迫力だ。それに加えて配達終盤では花火が打ちあがるという化学反応。粋なことをするじゃないか。
ウェイドが灯す恋の炎
水のキャラなんてろくなのがいませんよ。なにがギャラド〇だ⋯。
相当すねてるな⋯。だが、水のエレメント・ウェイドは素晴らしい男だぞ?
ない!絶対ない!そんなの絶対ありえなーい!!!
特に注目したいのはウェイド。彼は泣き虫で頼りない感じなのだが、スポーツ観戦で本調子を出せない選手を率先して応援したり、災害からエンバーを守ったりと、やるときはやる心優しい青年として描かれている。
彼の言葉は水の如く、こちらの心の隙間に入り込んでくるようなパワーを持っているんだ。それが、強い女性を装うエンバーの心へ無意識的に入り込み、その心を満たしていく様子は温かみにあふれている。
中でもウェイドのカッコよさに俺が惚れてしまいそうになったのは、エンバーへのサプライズを行うシーンだな。
幼少の頃、エンバーは永遠に枯れない美しさを保ち続けるというビヒステリアの花を父に連れられ見に来たのだが、火のエレメントであるというだけで監視員に入場拒否されてしまう。結局入場はできずじまいで、会場も水没して彼女がそれを見ることは叶わなくなった。
そんな彼女の昔からの憧れを、彼は風のエレメントと協力して叶えてくれたのだ。
彼の不器用さにより、全てが完璧ではなかったのも彼らしい。だが、好きな人を喜ばせるために愚直に尽くす彼の姿は男の鏡だ。
移民2世と老いがもたらす子孫への重圧。
ま、まあ、確かに?カッコいいかもですが⋯。単なる恋愛映画なんてごまんとありますよ⋯!
単なる恋愛映画かもしれないが、今作はヘビーなテーマもポップに包んでいる。
監督は今作に、両親の経験を色濃く映し出している。彼の両親はいわゆる移民であり、韓国からニューヨークに渡った際に大都会で奮闘していた。それがエンバーの家庭に投影されている。
そして、本作では移民2世が背負う重圧が鋭くえがかれている。彼女の父親は故郷が昔災害に遭い、それを機に自分の愛娘をいい環境で育てるため故郷を去りエレメントシティへと移った。
それから娘と共に家族経営で店を切り盛りしていたのだが、父は老いに直面する。
「お父さんが働けなくなるなら、私がこの店を継ぐから」とエンバーは父に言うのだが、本人は実は「店を継ぎたくない」「自分の夢を追いかけたい」という思いが潜在的にあったことに気づく。
ここでエンバーが自分の夢と父の夢を混同してしまい、板挟みの状態になってしまう葛藤が重く描かれる。しかもたちが悪いのは、父親には悪意がなく強要もしていないところだ。
仮に強要されていたのなら彼女は店を継いでくれることを喜ぶ父親に対して反発し、自分の夢を追うことに踏ん切りがつく。しかし強要されておらず、父親が自身の老体にむち打ち働く姿を見てきた彼女だからこそ、使命感に苛まれてしまったんだ。
それにより、彼女は誰のせいにもできないもやもやを抱え続け、自分の本当の夢に気づけたにもかかわらず「親の夢が自分の夢」という錯覚を軌道修正できないまま苦悩してしまうのだ。この彼女の行き場のない苦悩に心を締め付けられたよ。
MIA的映画調査提案
- 『RRR』
火と水の映画といえば、これも外せない!
イギリスの植民地となっているインド。
そこで娘をイギリス軍に誘拐され、娘の奪還を目論むビーム。
一方、イギリス軍に対して何やら企んでいるビームという男の捜査を任された警察官ラーマ。
列車事故での運命的な出会いを果たした彼らが互いの正体を知らぬままに友情を気づいていく作品だ。
火の勇者ビーム、水の勇者ラーマの運命的出会いとブロマンスは『マイ・エレメント』の進化系。
彼ら2人こそ間違いなく最強のエレメントだな。
- 『今夜、ロマンス劇場で』
今作が、水と火の「触れたいのに触れられないもどかしさ」を孕む映画であるという部分ならこの作品も似ている。
ロマンス劇場に通い、その映画の中にいるお姫様に恋心を抱く映画監督志望の青年が、ある日スクリーンから飛び出してきたそのお姫様と出会い惹かれあうというストーリーだ。
この作品で、お姫様はある秘密を抱えており、それ故に青年と触れ合うことができないという制約がある。
本作のもどかしいラブストーリーに近しい作品なので、このテイストがもし嫌いでなければこれを見るのも悪くない。
- 『金の国、水の国』
王道ラブストーリーでロマンチックなアニメーション映画なら今年はこれも負けていない。
長く対立しあう金の国と水の国。金の国の王女と水の国の建築士がひょんなことから結婚するが、そのことにより両国の運命が変わっていくというあらすじだ。
偽装結婚をする王女サーラサと建築士のナランバヤルの徐々に近づくも結ばれ難い血筋が障壁となる恋愛は本作同様のロミジュリ感溢れる切なさを含有している。
ナランバヤルの起点を利かせた頓智は本作のウェイド同様の頼れる存在感を醸し出しているので、全体的に本作に近しい温度感のある作品だな。
最後に
いい加減落ち着いたか?
ま、まあ⋯何とか⋯?
ミルフィ、お前もお前だろ。なぜ水相手に炎を出す?
え?だって噂ではリ〇ードンが最強と聞いたので、タイプ相性とか関係ないかなぁ~⋯って!
あぁ、ダメだなこれ⋯。
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