※今回より映画調査ファイル区分が変更!変更後の区分はこちら。
映画調査ファイル区分
SS⋯生涯ベストTOP5入りの調査
S+⋯大傑作の調査
S⋯傑作上位の調査
A+⋯傑作下位の調査
A⋯秀作の調査
B+⋯良作の調査
B⋯好みではある調査
C⋯可もなく不可もなくな調査
D⋯微妙な調査
E⋯苦戦を強いられた調査
アクション&ラブ。
久しぶりの調査お疲れ様です。
今回の調査ですが、GW前の目玉アニメ映画第一弾ともいえる探偵映画という事ですが?
ああ。今回の作品は名探偵コナンだ。
去年の『緋色の弾丸』からもう1年もたつとは、時間の流れは速いものだ。
あらすじ
コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。しかし、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。
引用:名探偵コナン ハロウィンの花嫁 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
この作品の脚本を書いている推理作家である大倉崇裕さんは他にも『から紅の恋文』『紺青の拳』の2つのコナン映画の脚本を手掛けており、今作が3本目のコナン映画の脚本となっております。そしてゲスト声優さんは元乃木坂46の白石麻衣さんです。
全体の印象
今作は近年のコナン映画の良さを引き出し、ミステリー以外の部分でも満足感を得ることができる素晴らしい出来だったな。ランタンや仮装等ハロウィン感も強く、季節外れのハロウィンをしている気分になるのもよかった。
ふむ⋯、ただ正直コナンにはミステリーの面白味がどれだけあるかが大事と思うのですが⋯。
確かに昔のコナンはいかにミステリーとして面白いかが大事だったな。
ただ、ミステリーの面白味に頼りすぎずに他の伸びしろも強化しているのが近年のコナン映画ともいえる。
近年のコナン映画について自分の周囲でよく話を聞くのが「ミステリー要素が薄くなった」「ほとんど推理しなくなった」という意見だ。これについてはごもっとも。『天国へのカウントダウン』や『迷宮の十字路』等、昔のコナン映画は「誰が犯人なのか」という謎解き感や事件のトリックが徐々に明らかになっていくワクワク感が強かった。その点、近年のコナン映画は犯人はわかりやすく事件のトリックも驚きを感じる部分が少ない印象を受ける。
だが、昔のコナン映画になくて今のコナン映画にあるものもある。それが「ふんだんに盛り込まれたアクション」と「キャラ映画としての魅力」だ。
昨年公開された『緋色の弾丸』ではハリウッド顔負けのカーチェイス、『紺青の拳』では京極とキッドの超人的なバトルアクション等が盛り込まれている。
そして、近年のコナン映画は特に「キャラ映画としての魅力」が強まってきていて面白い。赤井秀一、安室透、服部平治、怪盗キッドなどのメインキャラにもスポットを当てつつ、今までスポットのあたることの少なかった人物にもスポットが当たるようになっていて、新鮮な面白味が出るようになっている。
※以下ネタバレあり
高木刑事と佐藤刑事の恋路の行方
確かに京極さんや赤井ファミリー等、今まで映画で注目されていなかったような方々がサブメイン的立ち位置に据えられることが多くなってますよね。
今回もそんなメインとなる方が?
そう、それが今回は高木刑事と佐藤刑事だ。
今回の脚本家の人物が『から紅の恋文』や『紺青の拳』等、ミステリー+ラブロマンスとしての要素の強いシナリオを書く人ということもあり、今回はこの2人の恋路から目が離せない。
『から紅の恋文』では平次と和葉、紅葉の恋の三角関係を、『紺青の拳』では京極と園子のすれ違う恋が描かれている。そして今回は普段の映画ではメインとして取り上げられることのなかった高木刑事と佐藤刑事の恋路が全体にちりばめられている。
この2人の恋について深く語られるというわけではないのだが、序盤冗談気味に「いっそのこと刑事なんてやめちゃおうかな」と語る佐藤刑事に「刑事が事件を放り出して辞めるなんて言ったら負けなんじゃないですか」と始めて思いの丈をぶちまけるシーンからは彼が佐藤刑事のどんなところにひかれているのかが伝わるいいシーンだった。
そして佐藤刑事も松田刑事の殉職から付きまとうトラウマから、「もう二度と大切な人を失いたくない」という一心で高木刑事の潜入捜査の行く末を案じる姿は印象的だ。
終盤でも自分の危険を顧みず刑事としての責務を全うしようとする高木刑事の姿はカッコよく、そんな彼の姿に佐藤刑事が惹かれるのもよくわかる。ラストのキスはそんな全編を通して頑張ってきた彼に対する最高のご褒美であったといえる。
現在と過去をつなぐ爆弾魔プラーミャの事件
今回の映画の舞台は渋谷。
多くの人になじみ深い場所が舞台となっている今作だが、渋谷でお馴染みともいえるスクランブル交差点の如く交錯する過去と現在のつながりが深い事件も映画に見合ったスケールの物となっていたな。
爆弾魔プラーミャ。プラーミャとはロシア語で「炎」のことで、その犯行も「炎」が映像として映画映えするものとなっているようですね。
今回の犯人である謎の仮面の人物プラーミャ、こいつは安室と警察学校組のメンバーが三年前にある事件で追い詰めたものの取り逃してしまった犯人なのだが、この犯人の犯行がまさに映画として見ごたえのあるものとなっている。それが液体爆弾を使用した犯行だ。
赤色と青色の液体、これらが混ざり合うことでピンクの炎をあげて燃え上がるのがこの犯人の使う爆弾だ。作中ではこの爆弾を使用した犯行が何度か出てくるのだが、殺人事件にも関わらず視覚的に鮮やかな色合いに目がいき、少し美しいとすら思ってしまう。
そして、現在起きている事件から犯人を追い詰めるのではなく、三年前の事件が残した手がかりや犯人の雪辱がきっかけで犯人を追い詰めるという、過去あったからこその事件の終結となっているのが事件のスケールを壮大に見せてくれる。
そして正体までは伏せるがこのプラーミャという人物、過去のコナン映画シリーズの中でも上位に入るほどのド悪党なのだ。プラーミャは自分のことを知る者なら誰であろうとも殺す。そして今作ではプラーミャによって大切な人を失った者たちの被害者の会ともいえるグループが多人数で結成され、犯人を追い詰めようとしている。このことから、いかに今回の犯人が多くの人の命を奪い多くの恨みを買っているのかということは想像に難くない。
そして極めつけはその犯人の装備である。犯人は液体爆弾だけではなく、手榴弾やマシンガン等日本が舞台の映画とは思えない武装っぷりなのだ(ここまでぶっ飛んでるとむしろ清々しい)。挙句はバットマンが使用している印象の強いガジェットであるグラップルガンまで持っているという⋯。本当にこれはコナンなのか?と思ってしまうぐらいだ。
安室さんと警察学校組の魅力に溢れた超人的アクション
なるほど、やはりコナン映画というだけあって無茶苦茶ながらも壮大なスケールですね。
とはいえ、今作は警察学校組の話を知らないと楽しめなさそうな印象もあります⋯。
確かに警察学校組のエピソードを知っていることにこしたことはないが、見ていなくても楽しめる。事実俺はコナンについては映画でしか終えていないような状態だったが楽しめていた。それに知らなくてもこの作品のアクションはとても好みに刺さった。
コナンには警察学校編の話もあり、これは今作の登場人物のことを知るうえで見ておくにこしたことはないだろう。だが物語の進行上で提示される情報を押さえておけば十分に楽しめる。この作品を楽しんだ後に補完するような形で警察学校編を楽しむという事でも全く持って問題はないと感じる。
それぐらい今作のアクションシーンは良かった。特に警察学校の4人とプラーミャが対峙した過去。
スタイリッシュかつ超人的身体能力と起点の速さで犯人を追う安室、パワータイプとして守りやサポートをこなす伊達、安室さんのピンチに駆けつける諸伏、3人に犯人を任せ自分にできる「爆弾解除」という役割に徹する松田とそれぞれが役割を持って犯人の思惑を止めようとする様子は手に汗握るものだ。そしてラストに関しては安室劇場といわんばかりの安室とプラーミャの激闘が見れる。
過去にとり逃したリベンジマッチを見れるラストは秀逸だったな。
警察×公安×被害者の会
今回は現在と過去が交錯するようなストーリーであることは先に述べたが、今回はさらに組織や人物の思惑も交錯する部分もよかった。
今回は公安や警察だけでなく、先ほどの報告にもあった被害者の会の存在もありますもんね。
今作では大きく分けて3つの組織がプラーミャに対してそれぞれの思惑を持っている。
警察の場合、かつて殉職した思い人である松田の名前が挙がってきた事件を解決したいという佐藤刑事の思いが強く、公安の場合はかつての同期の関わった事件に決着をつけたいという安室の思いが強く出ておりお互い譲らない。
そしてそんな双方の思惑に突如として乱入してくるのがロシアからやってきた、プラーミャによって家族や大切な人を殺されたエレニカ率いる被害者の会だ。ちなみにこのエレニカをゲスト声優である白石麻衣が演じている。ややぎこちなさもあったが、違和感は少なかった。
彼女たちは愛する者を奪われたことでどんな手段を使ってでもプラーミャを殺すという思いがあった。それにより公安や警察の動きを一気にかき乱して調査を複雑化する展開はいい意味で流れを変えてくれたように思う。
そして、この3つの組織をつなぐ役割としてそれぞれの架け橋になったのがコナンだ。公安である安室と唯一接近することができることから公安と警察をつなぎ、終盤の展開にて「警察は信用できない」と豪語するエレニカを協力させられたのは彼がどこにも属していない、3つのグループの中心点的な立場であったからであろう。
愛の物語
これは余談だが、この話は3つの愛の物語を見ることができたような気がした。
この作品の中では3人の人物による愛の物語を感じることができた。
・愛する者を失うことへの恐怖
・愛する者からの裏切りによる絶望
・愛する者を失った者の悲愴
1つめは佐藤刑事だ。佐藤刑事は松田を失い、後に高木刑事も失ってしまうのではないかという思いを序盤の結婚式のシーンからも感じさせた。
2つめはこの作品の重要人物だが、その人物が愛による裏切りを受ける様子は悲痛であり、その後の絶望を考えると何とも言えない気持ちになってしまう。おそらくこの作品の中でいちばん泣きそうになったのはこのエピソードだ。
3つめはエレニカだが、プラーミャから愛する者を奪われた彼女の悲愴の深さは計り知れず、その悲愴が怒りへと変貌したと考えると彼女の愛したものへの愛がどれほど深かったのかがよくわかる。
最後に
以上が今回の調査報告だ。
やはりツッコミどころが多かったり、候補の少ないミステリー要素が脆弱な部分など気になる部分も往々にしてあるが、それを勢いで突っ切り気にさせないエンタメとして優れた作品だ。
ミステリー要素以外も突き抜けたさらに進化したコナン映画、そしてロシアの軍勢が参戦となると今の世界情勢も想起してしまいますね。なるほど⋯ますます興味が湧いてきますね。ちなみにこちらはどのファイルに保存しておきましょうか?
現状はAのファイルに保存しておいてくれ。
ただ『揺れる警視庁 1200万人の人質』と『警察学校編』などの今作と関係の深いエピソードを見ればこの作品の評価も上がる可能性は高いから年内に変えるよう申請するかもしれん。
その時は前もって言っておいてくださいね?いつも突発的な話が多いと困るので
調査結果:ファイルAに保存
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