※改めまして映画調査ファイルの区分はこちら。
トルテさん、とんでもないことになりました⋯!
ずいぶんと急だな。どうした?
本部から今回の報告書が嘘くさいから検証しろと⋯。とりあえずこれを。
⋯パラシュート?バイク?おいおい、まさか⋯。
ハイ、これで「報告書にあった諜報員のアクションを再現せよ」とのことです⋯。
待て待て待て!!MIAのルーツを生み出したあの諜報員の再現だと!?
『ミッション:インポッシブル デッドレコニング パート1』
IMFのエージェント、イーサン・ハントに、新たなミッションが課される。それは、全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出すというものだった。しかし、そんなイーサンに、IMF所属以前の彼の過去を知るある男が迫り、世界各地で命を懸けた攻防を繰り広げることになる。今回のミッションはいかなる犠牲を払ってでも達成せねばならず、イーサンは仲間のためにも決断を迫られることになる。
ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)より引用
あらすじはざっとこんなところ。
全世界を支配できるほどの力を持つAIの「それ(エンティティ)」。その実態はウイルスやオンラインのシステムの中に自在に侵入することができる変幻自在の新兵器。株式や金融機関、ミサイルなどの発射も意のままに操ることができる権利を獲得できるという事で、国家規模での争奪戦が始まる。
その鍵は1つはかつてミッションを共にし、現在は指名手配犯となっているイルサが、もう1つはとあるバイヤーが所持しているとのことで、その鍵を2つ奪還することを今回のミッションとして命じられたイーサンがその強大な力を持つ鍵を破壊しようとするというのが主なストーリーだ。
『ミッション:インポッシブル デッドレコニングPart1』とは?
- ミッション:インポッシブルシリーズ最終章の前編?
我々の発足のルーツともなった作品であるこのシリーズはもともと『スパイ大作戦』という1960年代からアメリカで放送されたテレビドラマシリーズのリブート版。
IMFという不可能作戦部隊の諜報員であるイーサン・ハントが仲間と共に不可能と思われるミッションを遂行していくという流れで基本どのシリーズも話が進んでいく。トム・クルーズの高度なアクションによって人気を博しているシリーズだ。
しかし、今回公開された7作目は前後編の2部作仕様の前編となっており、次回8作目が後編となっている。だが、この前後編が『ミッション:インポッシブル』シリーズの最終章であり、トムが主役のイーサン・ハントを演じるのもこれが最後であるといわれている。
そんなシリーズ最終章、我々としても色々と思いがこみ上げる部分もあるのだが、トムは本作のオーストラリアプレミアに出席した際のThe Sydney Morning Hearldという新聞の取材にて、今年の6月末に公開された『インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル』で主演を務めたハリソン・フォードについてのコメントをした際に「彼に追いつくまで、あと20年ある。彼の年齢になるまで、『ミッション:インポッシブル』を作り続けたい」という心境を明かした。
このコメントにより、どうなるかその真偽は不明だが、現在61歳の彼が現在のハリソン・フォードと同じ80歳まで『ミッション:インポッシブル』を続けたいというトムの気持ちは間違いなくあり、もしかすると9作目以降にも突っ走る可能性もあるので、これが最終章であるという事はこの報告の中では明言しないようにしておこう。
彼は撮影現場を墓場だと決めているのだろうな。
- 米国映画俳優組合によるストライキと興行収入により逆風気味
興行や製作について、今作は映画界隈を取り巻く厄介な世情によってこれまでにない逆風に苛まれている。
2023年現在、ハリウッドでは全米映画俳優組合によるストライキが敢行された。これは俳優や脚本家が動画配信サービスの拡大が進んでいる中で、自分達の仕事が縮小しないようにAIの利用制限や待遇改善を求めるストライキだ。
詳しいことを挙げていくと報告書にまとまり切らないので今回は割愛するが、それにより本来予定されていた日本プレミアなどの全世界でのプロモーションツアーやイベントが中止になる事案が発生しており、ストライキの影響で後編の製作もストップしてしまっている。
更に今作は制作予算がシリーズ最大であるモノの、全米での興行収益は2023年7月16日の段階で制作予算の4分の1程度に満たないという状況だ。
何としてでも完結はさせてくれ。
- 俳優人生で最も危険なスタント。
このシリーズの見どころといえばやはり主演のトム・クルーズが製作も担っていることによって実現可能なトム自身がスタントをする危険極まりないアクションだろう。
断崖絶壁のクライミングや離陸寸前のジェット機へのしがみつき、世界一高い建造物といわれるブルジュ・ハリファによじ登ったりと全てのアクションが命がけだ。
そんなトムのトンでもスタントが売りのシリーズ最新作たる今作だが、この中で彼自身が「俳優人生で最も危険なスタント」と評するスタントが盛り込まれている。それがバイクで崖から飛び降りるベースジャンプだ。
予告編を見たことがある人はすぐにピンとくるシーンだが、このシーンを撮るために彼は13,000回のバイクジャンプを行い、1年以上のトレーニングに励んでいたとのことだ。そんな訓練の賜物を見れるとなると必然的に気持ちが高鳴る。
複葉機に乗った状態での映画の宣伝も衝撃的な映像だったな。
ここがすごい!
- シリーズの過去作品をつなぐちりばめられた要素。
- 史上最も危険なアクションとコロナ禍の閉塞感を吹き飛ばす爽快感
- 米国俳優労働組合のストライキとリンクしたストーリー
というわけで1つずつ見ていこう
シリーズの過去作品を繋ぐちりばめられた要素
なんの因果でこれの再現を⋯。
あの人は俺たちよりはるかに特殊な訓練を受けているんだが⋯。
7シリーズにわたる危険スタント、私も検証できるとは到底思えません⋯。
シリーズ7作目となる今作も例にもれなく各シリーズのオマージュや繋がりを感じる演出が施されている。
まず、今回のキーアイテムとなるエンティティの鍵を狙うCIAの上官としてキトリッジが登場した。彼は1作目の『ミッション:インポッシブル』でイーサンに裏切り者の汚名を着せた張本人だ(尚、1作目については終盤その嫌疑は晴れるのだが)。
その他にも『ミッション:インポッシブル ローグネイション』から奇妙な協力関係のあったイルサや『ミッション:インポッシブル フォールアウト』で武器商人として登場したホワイト・ウイドウも登場する。
シリーズ初見でも楽しめる構成にはなっているものの、こういった繋がりが垣間見えるのはやはりうれしい。
中でも、内容のセルフオマージュを感じる部分があり、俺にとってはそこが印象に残ったな。それがオリエント急行での、今作のヒール・ガブリエルとイーサンの機関車上での決闘だ。
列車の上での攻防は1作目の『ミッション:インポッシブル』で既に出ていたのだが、当時はCGでの撮影となっていた。
しかし、今作の列車での攻防はCGではなく本当に機関車の上で戦っている。無茶苦茶が過ぎる⋯。
そのため、迫力は比べ物にならないぐらい磨きがかかり、新たなこのシリーズを象徴する攻防シーンとして生まれ変わらせることに成功したように感じたな。
史上最も危険なアクションが閉塞感を吹き飛ばす
とはいえ、やはりあの諜報員のアクションは心躍るものがあるな。
それは確かに!予告以上のアクションの応酬!スクリーンで見ると格別でしょうね。
そうだな。このエンタメ力はコロナの閉塞感を吹き飛ばす1品だ。
今作は先にも述べた通りトム史上最も危険なスタントであったとされるベースジャンプが盛り込まれているのだが、それ以外にも「おいおい正気か!?」と思わされるアクションが盛りだくさんだ。
まずは中盤にはガブリエルの手下やCIAの連中からの追跡を避けるカーチェイスシーンがある。そしてこのカーチェイスもただのチェイスではなく、ともに逃走したグレースという女性と片手が手錠で繋がれた状態でのチェイスだ。
しかも、手錠が右手に繋がれた状態で、彼女が左の助手席に乗るという構図の為、手をクロスさせた状態での運転となる。
ただのカーチェイスでもおそらく満足いくものにできていたと思うものの、そういった障害が立ちはだかることでこちらの求めている以上の映像を見せつけてくる。もうここまでくると正気の沙汰ではないな(褒め言葉)
そして今回演者の中では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のマンティス役でも有名なポム・クレメンティエフ演じるパリスの存在感がずば抜けている。
セリフ数自体は少ないものの、彼女自身がマーシャル・アーツの嗜みがあるという事もあり、血に飢えた獣のような狂気の爆発した、アグレッシブなイーサンとの決闘やカーチェイスで鮮烈な印象を刻んだ。
この作品は2020年から撮影されており、その時期は完全にコロナ禍と重なっていた。特にこの時期は不要不急の外出を避けるように世間では呼びかけられており、劇場への客足も遠ざかってしまっていた。
そんな映画界全体に閉塞感漂う時期に劇場映えするアクションにこだわりぬいて作られたこの作品は映画界への一縷の光といって差し支えないだろう。
トムが映画に込めた思いと米国俳優協会によるストライキとリンクしたストーリー
まあ、なにはともあれアレを再現するのは無理だ。本部にストライキを起こそう。
そういえばハリウッドでも俳優さんたちによるストライキが起こっているようですね?
今作は製作された時期も逆風傾向だったのだが、公開する時期についても逆風傾向強い時期となってしまっている。
というのも、今作は先にも述べた通りストライキの真っただ中の時期の公開となったからだ。これにより集客の手段となるイベント関係が軒並み中止になってしまうのは何とも歯がゆい。
だが、今作はストライキの争点となっているAIについての内容とトムの映画への向き合い方が如実に映し出される映画となり、映画の内容には追い風が吹いている。
今作の冒頭、IMFの新人がイーサンにメッセージの録音されたケースを渡す場面がある。この場面はトムと観客をこの映画で繋ぐ印象的なシーンだった。ここでイーサンはケースを受けとる際に新人にIMFの合言葉として「我々は影に生き、影に死ぬ。愛する人のために、未知の人のために。」と宣誓する。
これは新人を我々観客として映画館のスクリーンに招き入れ、そこで「自分は画面越しにアクションスターとして生き、アクションスターとして死ぬ。この作品を長く愛している人のために、もしくは初めてこの作品を観る人のために」という宣誓だったように思える。
そして、イーサンはその現場をあとにしようとする新人に向かってIMFに入ったことを「良い選択だ」と言って見送る。
つまり、これは今作を見に来た観客の選択を「良い選択だ」というように声をかけ、見に来たことを絶対に後悔させないという彼の映画へのこだわりの矜持を示すセリフという事だ。
ファンを喜ばせるために常に全力で映画に向きあう、彼らしいメッセージに思わずグッときた。
そして今作はお世辞にも脚本が素晴らしいとは言い難い。鍵の攻防の不鮮明さや各場面の必要性の薄さを感じることも多い。
だが、それはこのシリーズが「アクションの見せ場を作るために、脚本を寄せていく」という特殊な脚本づくりが起因している。なので、このシリーズには脚本が存在しておらず、演者のインスピレーションなどが脚本に反映されて物語が出来上がっていくんだ。
こういった柔軟な脚本づくりは人間だからこそできる。そして作品の内容もAIとの攻防を繰り広げるイーサンの姿を映し出しているので、まさしく今の映画界を象徴するような話になっている。
ガジェットやハッカー担当のベンジーやルーサーによるサポートが今回の敵AIエンティティによって無力化されてしまうものの、その後自分の身一つでミッションをこなそうとする姿はまさに今映画界に君臨するトムという男の姿だろう。
MIA的映画調査提案
- 『ミッション:インポッシブル』
すまないが今回は全て調査提案はこのシリーズで固めることとする。
まずは一番最初の作品となるこの作品だ。
IMFとして任務を遂行中、イーサンのチームが内通者の存在により壊滅し、その嫌疑をかけられたイーサンが逃亡しながらも真犯人を追う話だ。
1作目でシリーズの中でもまだ方針が「トムの危険スタントを魅せる」作品ではなかったため、アクションは緩いが、真犯人を追うミステリー要素が他の作品と違った魅力がある。
そしてこの作品でキトリッジやルーサーが登場し、列車上でのアクションもCGだが取り入れられているのでこの作品をより楽しめる要素が盛りだくさんだ。
- 『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』
シリーズ5作目となる作品で、IMFがCIAによって解体された後、謎の組織「シンジケート」をイーサンが追うというストーリーだ。
こちらでは水中での長時間アクションや冒頭には離陸するジェット機にしがみつくというスリリングなスタントを堪能できる。
この作品で初めてイルサが登場し、以降フォールアウトにもデッドレコニングにも出演する重要なキャラになっているので、今作のイルサがどんなキャラだったかを知ることができる作品だ。
- 『ミッション:インポッシブル フォールアウト』
シリーズ6作目となる作品で、ローグ・ネイションにてシンジケートの黒幕として君臨し、逮捕されたソロモン・レーンなきシンジケートの残党「アポストル」の企みをイーサンが阻止するという話だ。
ビルからビルへの大ジャンプで骨折したり、ヘリの貨物にしがみつき落ちかけるシーンなど、正直デッドレコニング以上に「見ていて痛い」と目を細めてしまうような感覚を受ける作品だ。
この作品でイルサが再び登場し、怪しげな武器商人ホワイト・ウイドウが登場するが、彼女は1作目に登場した情報屋のマックスの娘であるという事で、何気に1作目との繋がりもある。
最後に
我々もイーサン・ハントを見習いたいものだが、このアクションは彼にしかできないだろう。
ほんとにその通りですよ!でも今回の脚本、エンティティの翻訳だけは納得しがたいですね。
「それ」という訳か。確かに世界観に合ってない上に物語がわかりづらい一因になっていたな。
そうなんですよ!⋯あ、そういえば本部からの通達の件、しっかり飛んでくださいね!
え、ちょ⋯、待っ⋯。
調査結果:ファイルA+に保存
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